マッキンゼーをつくった男2

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー』読了。
久々のヒットでした^^

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

後半もマービンの担当した事案のエピソードや、彼の弟子(マッキンゼーの社員・OB)の活躍などが書かれていました。


本筋とはあまり関係ないんですけど、当時ハーバード大学学長のデレク・ボークがハーバード・ビジネススクールを批判した事件が取り上げられていて、マービンは当然ながらハーバード・ビジネススクールを擁護するわけですけど、そこでのデレク・ボークの批判がなかなか的を射ていて印象的でした。


ビジネススクールはこと経営に関しては豊富な知識を持っているが、社会に対する責任といった方面については無知である。ビジネススクールが社会的責任の教育を怠るならば、単に技術や知識の伝達者にとどまると言わざるを得ない。
大企業の経営者は社会における企業の役割を強く意識していると口にするが、ビジネススクールのカリキュラムをみたら、すくなくともビジネススクールがそうでないことは明白だ。ほとんどのビジネススクールでは、相変わらず企業の唯一にして最大の目的は成長と利益だという前提で討論を行っている。企業倫理に関する教育などはあまり行われていないのが実態だ。」


こういう批判が1979年の時点ですでにあったんですね〜
結局、マービンらが調査を行い、「ボークの批判も一理あるけど、ビジネススクールもそんなに悪くない」という無難な結論に落ち着き、抜本的な改革は行われなかったみたいなんですが、ハーバード・ビジネススクールの卒業生たちがその後金融業界で何をやったかは周知の通り。
やはり「社会的責任の教育」が足りてなかったんじゃないかな…^^;


ちなみに本の内容と直接関係はないんですが、最近私は「老人vs若者」みたいな本を何冊も読んでるわけです。
で、「老人」側の主張としては「若者は軟弱」とか「根性がない」みたいなのが多いわけですが、単純に「世の中が豊かに→ストレス耐性が低くなった」という要因だけでなく、問題の解決に対するアプローチが変わってきたという面もあるんじゃないでしょうか。


要するに、「ひらめきと個人の力で問題を解決する」という男性的な価値観(老人世代)と、
「広範な情報とチームの力で解決策を見出す」という女性的な価値観(若者世代)の対立ではないかと。
まぁ実際はどちらのアプローチでもうまくいく場合はあるんですが…
でも老人には、すぐに他人やウェブに頼り、独力での解決を放棄する若者が軟弱に思えてしょうがない。
若者は、自力での解決に固執し、また十分な意思疎通が行われないまま組織を運営する老人が不合理に見えてしまう。
どっちもどっちですが、今の社会にマッチしてるのは若者の価値観の方でしょう。
若者が上の世代に不満が持っているのは、そういう理由もあるんじゃないかな〜?
ちなみに40代くらいの比較的若いリーダーの場合、後者の価値観を理解してうまいこと組織を運営してる人もいますね。
なんか本の内容とかけ離れてきたけどw


全体を読んで一番印象に残ったのは、マービン・バウワーの高潔さというか、会社の理念を貫き通そうとする信念ですね。
これだけ「初志貫徹」ができる人は歴史上の人物の中でもごくわずかなんじゃないかと思います。
マッキンゼーという会社が、長い期間にわたって有能なリーダーを輩出したり、質の高いコンサルタント業務を維持したりしているのは、充実した教育プログラムや風通しのいい企業風土によるところもあるとは思いますが、やはりマービン・バウワーという突出した人物が70年という非常に長い期間、会社をサポートし続けたからなんじゃないかと思います。


さて、マービン・バウワーが死んで7年。
そろそろ綻びが生じてもおかしくない時期ですが…