若者が騙されるパターン

以前、twitterでこんなツイートをしたら反響があったので、それに関連した記事を書いてみようと思います。

「若いうちに苦労しておくと後で楽」というロジックに騙される人間が多いが、実際は「後で役に立つ苦労」と「何の役にも立たない苦労」があるので注意。もちろん大部分の経営者は、若者を育てるためではなく利益を出すために人を雇うので、彼らの言う「将来のため」は十中八九方便であろう。

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まぁ大雑把に言ってしまえば「経験が足りないから」「正確な利害の予測ができないから」だと思うんですが、少し細分化して考えてみようと思います。


パターン1:知識の不足により騙される

これは単純なケースですし、若者に限った話ではないですけど。

例えば、ウェブ上のいかがわしいサイトでは、クリックした途端「直ちに料金を振り込まないと通報します!」などと表示されるものがあり、中にはその手の詐欺の手口を知らずに振り込んでしまう人もいるとか。

「そういう詐欺の手口がある」ということを知っていればまず引っ掛かることはないでしょうし、法律やITの知識(例えばIPアドレスから通常は本人の特定までできない)によって回避することもできると思います。

そんなわけでこのパターンに関しては、回避するのはそう難しくはないかと。


パターン2:将来の利益を過大評価して騙される

これに関しても「知識の不足」という面はあるのですが、若者は人生の残り時間が長いですし感受性も強いので、仮に老人と同程度の知識を有していても騙される可能性は高いと思います。

典型的なのが、「将来役立つスキルが身につく」などと謳って、劣悪な条件で働かせるパターン。

実際に収入や労働時間が不利でも得難い技術が身につくので価値がある、という場合もあるでしょうが、大抵はさしたる技術が身につくわけでもなく、人を騙して集めるテクニックに過ぎません。

でも若い人にはかなりの効果があるらしく、この手の宣伝文句を使って巧みに労働力を確保している会社もあるようです。

通常は入社して数ヶ月すれば騙されたことに気づくでしょうが、一度入ってしまうと辞める手間や転職時のリスクが大きいので、そのまま会社に残る人もいるでしょう。

また、中には入社してからも騙されたことに気付かずに、劣悪な労働条件で嬉々として働く人もいるかもしれません。

それはある意味では幸福なのかもしれませんが、その会社で学べることを学んだ後に転職を試みた際、自分が思っていたほど覚えた技術が評価されず、途方に暮れる危険性はあります。


パターン3:将来の不利益を過大評価して騙される

まぁ「不利益≒既に得られた利益や将来見込まれる利益の損失」と考えればパターン2と本質的に同じなんですが…

ただ心理的には「既に得たものの喪失」は「何も得られない」とは異なりますし、一般にダメージも大きいので敢えて別のパターンとして扱ってみます。

具体例を挙げると分かりやすいと思うのですが、例えば仕事の取引先に「もう少し安くしてもらえないと今後のお付き合いを考える」と言われて、相手の圧力に屈してしまうとか。

もちろん、こういった技術は交渉に不可欠だと思いますし、実際に取引を打ち切られれば不利益を生じるわけなんで、過小評価するのもマズイわけですが。

ただ実際は上記のような話が出たとしても、そう簡単に他の有利な取引相手が見つかるとは限らないですし、特別重要な顧客でなければ取引を打ち切った方が賢明という場合もあるでしょう。

しかしそういった判断をするには相応の経験が必要ですし、単一の製品の売買に限らず様々な協力を行っている相手であれば、「将来の不利益」を正確に見積もることは難しいと思います。

そういう状況で困惑するのは若者だけではないでしょうが、この手の脅しに屈しないためには、それなりの人生経験が必要ではないかと。


合わせ技

例えば新しく配属された部下に対し、配属直後でやる気のある時に、「やりがいのある仕事だが大変だぞ。やれるのか?」などと聞いておけば、新人は大概「ずっとやりたいと思ってた仕事なので、どんなに辛くてもやります!」などとポジティブな返答をするので(パターン2)、そこで言質を取っておきます。

その後、仕事内容がそこまで面白くなかったり、新人に雑用が多く回ってきたりすると、いろいろと不満が出てくるわけですが、「あれだけ大きなことを言ったんだから、ちゃんとやるよな?」などと釘をさしておけば、新人としては「言動に責任を持たない人間と上司に思われたらいろいろ不利になるかもしれない…」という心配もあり(パターン3)、上司に従わざるを得なくなります。



〈対抗策?〉

まぁ基本的に経験を積むしかないですし、私自身今でも騙されながら生きてるわけなんで、あまり偉そうなことは言えませんが…ただいくつかコツのようなものはあるかと。


1.知識・経験を増やす

これは当たり前の話ですけどw

最近はウェブ上で様々な情報が手に入るので、知識を増やすのは昔よりもはるかに簡単です。

ただ、自分ひとりで知識を増やそうとすると、知識の偏りが修正されない場合が多いので(例えば自説を補強する情報ばかり集めてしまうとか)、友人や先輩と適宜相談するのがいいでしょうね。

下記の「フィードバックを得る」の項でも似た話が出てきますが、自分がやろうとしている分野の先達に聞くのが一番強力な手法。


「経験を増やす」も言うまでもないことだと思いますが、理屈で重要性が分かっているのに、なかなか行動に移せない人がいるようです。

何人かそういう人を見て感じたのは、「どうも世の中がマニュアルどおり・社会通念どおりに動いていると思っているらしい」ということ。

ゆえに「わざわざ時間割いてインターンとか行かなくても大丈夫じゃね?」みたいな発想になる。

実際は現場を見ないと分からないことが多いですし、法律や社会通念に外れたことを平気でやっている所も結構あるw(まぁインターンではあまり見せないだろうけど)

まぁそういうことも「経験しないと分からない」ので、最初の一歩を踏み出すのが難しいですが…

とりあえず、
「この国は先進国に見えても一部の法律がザルだったり、前時代的な価値観が残ってたりするので、若いうちにいろいろ経験を積まないと危険」
ということと、
「これからの時代はグローバル化で途上国と仕事を取りあったり、人口増加で資源を奪い合ったりするので、若いうちにいろいろ経験を積まないと危険」
という警告だけ記しておきますw


2.選択肢を広げる

特にパターン3に有効な手なのですが、相手の機嫌を損ねる可能性が深刻に感じられるのは、相手が自分にとって不可欠な存在だからであって、代替可能な存在であればそこまで顔色を伺う必要はないわけです。

仮に仕事が順調に進んでいる時であったとしても、他の上司や同僚などとも親しくしておき、いざという時そちらへ逃げられる、あるいは手助けしてもらえる状況を確保しておくべきかと。

一般的に、何らかの努力をして欲しいものを得た場合、その時点で努力をやめてしまいがちですが、得たものをずっと維持したいのであればその後も努力を継続し、仮に失っても再獲得できるのがベストだと思います。


3.適切なフィードバックを得る

パターン2に引っ掛かからない手というか、引っ掛かっても早い段階でリカバリーする方法です。

上記のような「転職に有利なスキルが身につく!」という謳い文句であれば、それが本当に転職に有利なのか、あるいは日常の業務で本当にそれが身につくのかを自分なりに検討することで、本当か嘘かを検証することができます。

学校の勉強であれば定期テストや模試などで(授業の理解度に関する)フィードバックが得られますが、社会に出てからは自分でフィードバックを得なければならないケースがほとんど。

またどうやって確かめたらいいか難しい問題も多く存在します。

さらに、フィードバックを得ることで自分の今までの努力が否定されることもあるので、怠惰な人間はついついそれを避けてしまいがち。

(まぁ「誤った努力の否定」こそがフィードバックの効用なんですけどね。その後方向性を修正できればそれ以上無駄な努力をせずに済むし、目的達成の可能性も上がる)

しかしそれをしないことには、騙されたまま何年も棒に振ることになります。

(さらに騙された期間が長いほど、自分の努力を否定したくない心理が強く働き、嘘と見抜くのが難しくなる)


割と汎用性のある方法は「自分がやろうとしている分野の先達に話を聞く」ですかね?

そういう人が見つかれば、その人に自分の状況と意図を話すことで、正しいか間違っているか、あるいはどういう方向に修正すればいいかコメントをもらうことができます。

まぁ学校のテスト以上に「評価する側が間違っている」可能性は高いですし、「誰に話を聞くか」「どうやってその人に会うか」「相手に何を伝えるか」「相手の発言をどう解釈するか」など、経験がないと難しい部分もありますけど。

ちなみに上記のような「技術の向上」であれば、資格試験の類である程度評価することも可能かもしれませんね。


4.人間関係を気にしすぎない

「人間関係」も「利益」や「不利益」をもたらす要因の一つに過ぎないわけですが、判断を誤る頻度の高い人は特に人間関係に拘るというか、ウェットな人が多いので。

もちろん人間の生活において重要な要素だと思いますが、予測できない部分もありますし、個人差が大きいので一般的な対処法を見出すのは困難です。

「特定の人物との良好な関係の維持」に固執すると、(相手の意図、要求に対応するため)ものすごいコストがかかりますし、上記のようにそれにつけ込まれて不利な条件を飲まされる危険性もあります。


「選択肢を広げる」とも関係するのですが、自分から積極的に友人を増やせる人は、誰かに嫌われても別の友人を見つけることができるので、他人の機嫌を伺うことが強迫的になっていない気がしますね。

(まぁ極度の寂しがり屋ゆえに友人を増やそうとする、というケースもあるにはありますが)

「他人と積極的に関われるか」には先天的な要素もあると思いますが、上記のようなリスクを知っておけば、いくらか積極的に動けるのではないかと。

ちなみに上司に関しても同様の戦略は有効だと思いますが、自分の意志で選べない場合が多いので、友人の場合よりも厄介ですね…



…こんな感じで思いついたことをつらつらと書いてみましたが、いかがでしょうか?

「若者」の特徴として、「未来のことや抽象的なものを高く評価する」という傾向があるように思えるので、騙すのであればそういった概念をちらつかせるのがポイントかと。

逆に騙されないようにするためには、言葉のイメージに踊らされずに実態を正確に把握するのが重要ですかね?


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