アメリカ追従

法科大学院を作って、その分司法試験を簡単にしたら、弁護士が余って就職難になった、というお話。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100812-OYT1T01155.htm
未内定率の劇的な伸びは、確かにショッキングかも。


で、「何でもアメリカに追従すればいいというものではない」とか、「日本のシステムには合わないのではないか」という批判が出てるわけですね。


正論だと思いますが、「物事を荒立てない」のが美徳の日本とは異なり、アメリカという国は何でも試行錯誤して合理的なシステムを構築しようとする国です。実際、構築に労力と時間をかけているだけあって、洗練されたシステムが確立されている分野が多い、というのが私の個人的な見解です。(少なくとも大学院を含めた教育制度に関してはそう思います。)
そんなわけで私は、日本はまだまだアメリカから学ぶことが多いと思うし、行政がアメリカの後追いになること自体、別に悪いことだとは考えていません。


しかし…もうちょっと「うまく」できないものか。
弁護士が余って就職難になることは容易に予測できたわけであって、あらかじめ何らかの策を講じるべきではなかったかと思うのです。


例えば弁護士数を増やすにしても、もうちょっと漸増的な増やし方にすればよかったのではないかと。
試験の難易度とボーダーからおおよそ合格者を見積もることができたでしょうから、大量の弁護士が職にあぶれない程度の増加に抑えることはできた気がします。


あとは…あらかじめ事務所に「司法修習上がりの弁護士を雇ったら助成金出すよ〜」みたく、受け入れる側の準備もしておく、とか?
まぁ事務所にたくさん入ったら、その後独立せにゃならん弁護士が増えるわけで、数年後に独立の支援とかも必要になるかもしれませんが。


ま、ともかく、行政には将来起こるであろう事態を予測して、早目に手を打ってもらいたいと思うのです。


ちなみに私は法律の業界のことは詳しくないので、「法科大学院の設置の意義」とか「司法試験合格者増の意義」はよく分かりません。
ただ、もし法科大学院が設置されたことで、「大学で別のことを学んでいたけど、途中で法律に興味が移った」という学生が速やかに専門を変更できるのであれば、それはメリットの方が大きいんじゃないかとは思います。
社会が成熟すれば、必然的に「自分のやりたい仕事をすべきだ」という風潮になりますし、大学入学後に進路の変更を行うのは今後「フツーのこと」になるでしょう。ゆえにそれに対応する社会(教育)システムを構築することは急務ではないかなと。


まぁアメリカ追従でもなんでもいいから、行政の方々には日本のシステムを少しずつ改善していった欲しいんですが…なんかこの流れだと「日本も大学院を前期・後期一貫の5年制に!」とかやりそうでちょっと怖い。
ポスドク大量発生で少しは学んだと思いますが、やはりそういうアメリカの教育制度を取り入れるのであれば、「社会の受け入れ体制」と「大学院内部の教育水準」もアメリカ並みにしておかないと、適切にシステムが機能せず、弊害の方が大きくなってしまうわけです。


「社会の受け入れ体制」という意味では以下のような提言はかなり重要だと思いますけどね…行政が聞き入れてくれればいいけど。
卒業後数年は新卒扱いに…日本学術会議提言へ
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100814-OYT1T00945.htm