忠犬教育

ひろゆきホリエモン勝間和代の鼎談本『そこまで言うか!』を読みました。

そこまで言うか!

そこまで言うか!

どうも「デキビジ」でひろゆき氏と勝間氏が対立したのを見て堀江氏が「仲裁に入ろう」と思ってこの鼎談が始まったみたいですが、仲裁と言いながら一番しゃべってるのが堀江氏だったりしますw
しかし、三人とも合理的な思考の持ち主だし、ITに詳しいという共通点もあり、話がかみ合っているので読んでいて非常に面白いです。
性格やキャリアの違いから異なる見解が出てくることも多いですが、それも議論を盛り上げているし。
ひろゆき氏と勝間氏もいくつかのテーマに関しては見解の一致をみたようだし、堀江氏の意図していた「仲裁」も結果的にうまくいったのではないでしょうかw


議論されているテーマは以下のもの。
1.インターネット規制(匿名性などの問題)
2.光回線を国費で日本中に普及させるべきなのか
3.収入(雇用形態)と幸福感
4.日本文化(漫画、雑誌、ゲーム)
5.働き方(起業か就職かフリーターか)
6.日本の政治
7.若者は既得権益層にどう立ち向かうべきか


「ほほう!」と思う議論はいくつかあったんですけど、個人的には3章の「会社での雇用に固執するのはなぜか?」という話の中で、「所属していることが重要なタイプ(犬タイプ)とあまり気にしないタイプ(猫タイプ)がいて、日本には犬タイプが多い。で、それには学校教育も関係してる。」という意見が興味深かったです。
今思うと確かにそういう教育(「上司や組織に従順であるべし」)を受けてきた気がするし、日本人の思考はそういった教育によって歪められている部分があるように感じます。


「そういう教育(洗脳)からいかに抜け出すか」という問題も重要ですが、とりあえず「組織に従順」な人間が多いことのデメリットについて考えてみたいと思います。
まず、この本でも述べられていることですが、そういう教育を受けた当人が
1.組織から外れた時に狼狽してしまう。
という問題があります。失業して鬱になるとか、再就職に手こずるとか、あるいは組織から放逐されないために汚い仕事にまで手を染める、などといったこともあるでしょう。確かにこれが一番の問題ではある。


でも副次的な問題として、以下のようなものも考えられます。
2.部下が従順なため、上司がスポイルされる。
3.従順な人間が多数派なので、そうでない人間が行動を起こしても封殺されてしまう。


2がどういうことかと言うと、本来上司は部下をうまく動かすために頭を使わなければならないわけですが、無茶な要求をしても部下がそれに従うと、次第に頭を使うことを放棄し、いい加減な指示しか出さなくなるということです。
また、独立心のある部下の場合、相手が上司でも承服しかねる点や改善すべき点を指摘するでしょうから、上司はそれを参考に仕事の内容や自分の行動を修正することができます。でも従順な(あるいは盲信的or自我がない)部下の場合は上司に進言することはないので、自分が見落としている問題に気づく機会はほとんどありません。


3は、非常に単純な例としては「上司の横暴に耐えかねて仕事をボイコットしたけど、周りは我慢して働き続けたので、上司(会社)に痛手を与えられず、自分だけ解雇された」なんてことが考えられます。さすがにそこまで安直なことはしないだろけど。
そこまで直接的な行動でなくても、例えば上司に対して進言した場合、周りは決してそういった行動を起こさないので、自分だけ浮いてしまい、上司に目を付けられるとか、圧倒的多数が何ら主張をしないため、従順でない人間の主張も容易に封殺されてしまう、などといったケースが起こりうるでしょう。
結局大部分の人間が組織に従順である限り、何らかの主張を通すことは難しい状況になってしまいます。


どうにかならんのかなこの国は…
ちなみに別の章で勝間さんが、「私立よりも公立校出身者の方が『言われたことに従順』な気がする」といった趣旨の発言をされています。
そういう傾向はあるかもしれない。


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上記の話とはあまり関係ないんですけど、『そこまで言うか!』でちょっと面白かった発言をいくつか挙げようと思います。
(「…」以降が私の感想。)


堀江:僕はよくわからなかったんですけど、友達の経営者がみんな、「勝間さんって、あのIT業界に対してボロクソなレポート書く人だよね」みたいな感じだったんですけど。

…勝間さん、誠実な仕事をされてたんですねw


既得権益層といかに戦うか、という話題で)
西村:日本の場合は外圧を使って、世間の人が卑怯だと思うようなことをやらないと、変わらないですよ。

…鋭い見解だと思う。


勝間:嫌なことはやめていけばいいのに、やめないですもん。それで私が嫌なことをやめてくと、ワガママって言われるんですよ。私いろんな人に言われましたもん、「お前みたいなワガママな人間は、見たことがない」って。

…確かに日本で合理的(自分勝手という意味ではなく、契約で決められた仕事だけこなすとか、キャリアアップのために転職するとか)に行動しようとすると必ず「ワガママ」と言われますよね。…アホくさ。


…この3人の鼎談は読んでて面白いし、かなり貴重ではないかと思います。
当初の予定では堀江氏が司会役だったみたいですが、実際は自己主張の強い堀江氏と勝間氏を西村氏がうまくコントロールしてる感じ。
各テーマへの見解は三者三様ですが、三氏ともそれなりに論拠のある意見を述べています。
未読の方には一読をお勧めします。