複数指導教官制

以前から「日本の大学院教育はマズいんじゃないの?」といった趣旨のエントリを何度か書いてきました。

ポスドクは本当に使えるのか

ループ&ループ

んで、とるべき策はいろいろあると思うんですけど、その中でも重要なのは「複数指導教官制」の導入ではないかと。


「複数指導教官制」というのは、要するにメインの指導教官の他にサブの指導教官がいて、必要に応じて彼らからも指導が受けられるというものです。

欧米の大学に留学した知り合いが、そういう体制の下で指導を受けていると聞いて「へぇ〜」と思っていました。

日本でもそれに近い話を耳にすることがあったんですが、調べてみたら意外に多くの大学ですでに導入されているようなので、ちょっとそれについてのエントリを書いてみようかなと。


〈複数(副)指導教官制実施例〉

http://www.mechasys.jp/activities/report/support/id786.html

http://www.is.tohoku.ac.jp/information/fukushidou.html

よくあるご質問 - 総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻博士課程

京都大学 大学院生命科学研究科


同時期に複数の大学で導入されているので、おそらく文部科学省からお達しがあったんじゃないのかな?

導入する目的は「幅広い知識を有する学生を育成する」とか「学際的な研究を促進する」とかそんな感じ。

おそらく欧米のトップレベルの大学でも「複数の指導教官から指導を受けて、研究の質をより高める」という趣旨で行われ、実際にある程度成果につながっていると思うんですが…

でも私が「日本の大学に複数指導教官制を導入すべき」だと考える理由は、上記のようなものではありません。

アカハラや指導ネグレクトの防止のためにこそ日本の大学に導入すべきだと思うのです。

(そういう意味では、東大・京大よりも地方の国立大がまず導入すべきだと思う。)


以前のエントリでも書きましたが、日本の大学(特に地方の国立大)では、「学生の自主性を重んじる」という建前のもとで、ろくに研究指導をしない(そもそも研究能力の低い)大学教授が多数存在します。

そういう教授の下についてしまった学生は、研究が進まず鬱になり、社会からドロップアウトしていくわけですが、大学の研究室というのは独立性が高く閉鎖的なので、同じ学科(専攻)の別の教授に助けを求めることが難しい状況にあります。

また本来教授がすべき雑用を押しつけられ、大学にいる時間のほとんどをその仕事に取られてしまい、研究する時間が取れない学生も多いと思います。

複数指導教官制の導入はそういった状況の改善・防止に効果があるのではないでしょうか?


ちなみに私が考える「複数(副)指導教官制の具体的内容」は以下のような感じ。

  • 博士前期・後期の学生(手間がかかるようなら後期学生だけでもいい)に副指導教官を1〜2名つける。
  • 副指導教官は1月に1回(それが厳しければ2〜3月に1回でもいい)、担当する学生とミーティングを行う。(このときメインの指導教官を同席させるかどうかは議論の余地があるが、おそらくさせない方がいい。)時間は1時間程度。(30分でもいい。)
  • もちろん、学生の研究テーマと自分の専門分野が密接に関係していて、研究に対する助言ができるのであれば助言をする。(それが本来の趣旨だろうからね。でも後述するけど、役に立つかどうかは微妙なところ。)
  • 副指導教官の義務として、学生の研究の現在の進捗状況を毎回確認する。
  • 進捗がおもわしくないようであれば、その理由について話し合う。


  • 学生との話し合いの内容を踏まえ、メインの指導教官に自分の考えを伝える。

最後の3つが重要で、これを行うことにより、上に挙げた「指導のネグレクト」や「雑用の過度な押し付け」が露呈し、またこういったシステムがあらかじめ導入されていれば、それらを未然に防ぐこともできます。(バレると分かっていれば、いい加減なことはしないだろうから。)

日本の大学教授は概して、

  • 研究能力が低い
  • コミュニケーション能力も低い
  • 倫理観が欠如している

ので(人間のクズですねw)、上記のようなシステムの導入は不可欠だと思います。


ちなみに「副指導教官からのアドバイスを研究に生かす」というのが、複数指導教官制の本来の趣旨ですが、これが本当に可能かどうかは微妙なところ。

もちろん、メインの指導教官が熟知している分野というのは限られているので、研究の対象を拡げようとする場合、他の教官からの助言が重要なのは間違いないのですが…

ただ日本の大学では結局のところ、メインの指導教官の指示に従って研究を進めていくことになります。ゆえにその指導教官が研究の方針を変えるつもりがないのであれば、他の教官が助言をしても結局生かされないことになってしまう。

もし本当に副指導教官の指導を研究に生かそうとするのであれば、メインの指導教官と副指導教官が頻繁に学生の研究について話し合う必要がありますが、その時間を確保するのは難しい場合が多いでしょう。


そんなわけで、日本の大学院にそこまで高度な教育は求めないけど、せめて「まっとうな」教育を保証するために、上記のような制度を一刻も早く導入してほしいと思います。


〈関連リンク〉

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