若者殺しの時代

某ブログで紹介されていたので読んでみました。
若者殺しの時代 - Chikirinの日記 若者殺しの時代 - Chikirinの日記
(注文してから1日で届く、amazonの流通システムは優秀だ…)

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

感想は…うーん、わりとフツー?
なんつーか、私は「小学校に入ったときには平成だった」という世代なので、「そういうことが起こっていたのか!」というよりは「そういう経緯でああいう事態になっていたのか…」という印象ですね。
いや、結構よく調べられているし、個々の章の内容は面白いのだけど、「若者殺しの時代」というタイトルからもっとラディカルな内容を期待していたので、やや肩透かしを食らった感が。


各章で、若者向けの文化(クリスマス、ディズニーランド、マンガ、ドラマなど)を一つずつ取り上げて、データを基に年代ごとの変遷や社会への影響を考察してます。
おそらく個々の章が一回分の雑誌記事で、それを本の形でまとめるために、「若者殺しの時代」という全体に共通する(?)タイトルをつけたんじゃないかな?


著者が指摘する「(恋愛に関する)若者の文化の商業化→女性をターゲットとしたマーケティング戦略(「こういう生活がロマンチックですよ〜」)→女性の要求水準の上昇とそれに応えられる男性の選別→女性自身も恋愛が困難に」という流れは確かに存在してると思うし、「若者殺しの時代」というタイトルにマッチしてるかな、と思います。
高校くらいのときの印象として、「バスケ部(orサッカー部)」「イケメン(風)」「ドラマに詳しい」「流行の音楽にも詳しい」という記号をまとった男子学生がやはりモテていたし、逆にそこら辺を押さえていないとなかなか相手にされない、という感じ。
まぁ必死に雑誌で勉強して「モテる」ようになった男性が幸福だったかは分からないし、そういう男と恋愛の「お約束」を一つずつ消化していった女性が楽しかったかどうかも分からないけど…
…なんとなく『Bバージン』というマンガを思い出したw

Bバージン 1 (ヤングサンデーコミックス)

Bバージン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ちなみに恋愛市場から退場した男性の「処方箋」としてこの本では「ヘアヌード」や「AV」が挙げられているけど、それ以外にも「成人マンガ」や「成人ゲーム」なんかがありますよね。それらはすでに大きな市場を形成しているわけだけど、「恋愛に参加しない」男性の地位を固定化する役目も果たしている。
あ、そういや上記のようなマーケティング(「女性に夢を!」)が晩婚化にも一役買ってるわけだけど、それもまた「婚活ビジネス」という新たな商売のネタになってるわけですね。うーん、ここまで来ると確かに「食い物にされてる」感があるなぁ…


ただ何と言うか、上記のような「若者向け文化の商業化」があったから、「若者の居場所がなくなった」とか「若者が絶望している」というわけではないと思う。
(思春期のストレスの一因にはなってるかもしれないけどw)


確かに、国全体が上り調子のときの方が国民のモチベーションは高いだろうから、団塊世代と同じだけの労働意欲を今の若い世代に求めるのは無理でしょう。今後日本が当時のような発展を遂げることはないだろうし。
でも今の若い世代が全く希望や労働意欲を持っていないわけではなくて、「日本もこれから先どうなるか分かんないけど、とりあえず仕事がそこそこ面白くて、食っていけるだけの給料もらえればいいかな〜」くらいに考えている人が多いと思う。


でも今の日本社会ではそういう若者の大部分が「殺され」ている。具体的には、定職に付けなかったり、会社にうまく適応できなかったりして、鬱屈した日々を送っている。
私が考える「若者を殺す要因」は以下の2つ。

1.部下に無茶な仕事を押し付け、やたらと叱責することが「教育」だと思い込んでる上司。
2.成人後も資金援助をすることが子供のためになると思っている親。


1のような「教育」は、団塊世代の場合には有効だったんだろうけど、今は通用しません。
ストレス耐性が落ちているというのもあるけど、若者の価値観として「会社の業績アップ」よりも「仕事の面白さ」の方が重要なので、「死ぬ気で働いて会社に貢献しろ!」と言われても「ハァ?」って感じ。
そもそも会社が後々まで面倒みてくれるという保証もないしね。
そういう世代間の価値観の齟齬とその解決策は、松本順市さんがうまく書かれていると思う。

上司はなぜ部下が辞めるまで気づかないのか? (Nanaブックス)

上司はなぜ部下が辞めるまで気づかないのか? (Nanaブックス)


もちろん、部下に理解のある上司を持ったとしても、仕事として何かやる以上、うまくいかないことや、キツイ作業もある。
そういう時に仕事を辞めずにその場に留まらせるのは、「辞めたら食っていけない」という経済的な理由だったりするわけだけど…
今は「会社辞めたよ。仕事がつまんなくてさ。」とか言えば、「そんな会社にいることないわ。しばらく家にいなさい。」なんて甘やかす親がいるので、ついつい「辞める」選択肢を選んでしまいがち。
ニートだって親が養ってやるからこそ存在するわけで。
「過剰な援助をしない」ことが子供のためだと思うんだけど、日本にはそう思わない親が結構いるみたい。
もちろん、子供が40くらいになってから「家にお金ないから働いて!」と言っても手遅れなので、大学生くらいから徐々に一人立ちさせる必要があるけど。


そんなトコかな〜?
つーか1も2も日本よりも時間をかけて発展してきたヨーロッパやアメリカではすでに「非常識」だと認識されてるので、そういう意味で「若者が殺される」理由は「日本が急速に発展したから」とも言える。(「恵まれた環境で育った世代」が社会の中心になる頃には、「甘やかすのはよくない」とか「精神論は通用しない」という価値観が根付くはず。自分達の経験から。)
今後日本でも次第に認知されていくと思うけど、まだ時間はかかるだろうから、ベビーブーマーから90年代生まれくらいまでは「割をくった世代」ということになるのかな?
日本社会が一日も早く「成熟」することを祈ってます〜